美大研究生/ 23才
初めて眉毛を剃った日。
人見知りはあったものの、無邪気で毎日がただただ楽しかった小学生時代。
3年生のある日、クラスメイトの女の子に言われた一言が胸に刺さった。
「〇〇ちゃんの眉毛って、両津勘吉みたいだよね。」
どういう意味かわからずその子の眉毛を見たら、その子の眉間には全然毛が生えてなくて、自分の眉毛はうっすらと繋がっていた。
そういうことか、と理解し、その日のうちに自分で眉毛の間を剃り落とした。
小さい頃から体毛が濃かったけどそれまで特に気にしたことはなかった。
それが、初めて自分の「毛」と向き合わされた瞬間だった。
スクールカーストの中で。
中学生になる頃には持ち前の無邪気さを少し失っていた。
いわゆるスクールカーストの最下部に自分が存在していると感じていた。
カースト上位の子たちに変な目で見られたり笑われたりしていたので、それまで友達と教室で歌うのが好きだったけど、目をつけられるのが怖くてやめた。
スクールカーストの図はよく三角形△で表されるけど、実際はひし形♢だと思う。大多数を占める中間層の下に、最下部の子たちがいて、そこにいる子たちは変な子が多くて、一緒にいて面白かったので学校生活は概ね楽しかった。
中一の夏のプールの授業の時、生え始めていたワキ毛を、自分で剃って授業に出た。その時、友達の一人がワキ毛を生やしたまんま水着を着ていた。
「うわ」と思って、正直引いた。
全身脱毛、ムダ毛をなくすのが正義？
その後も中学高校とずっと全身の毛を剃ったり抜いたりしていたけど、だんだんと毛深いのがコンプレックスになり、半袖に変わる季節がイヤだった。
「毛が生えてると男性に嫌われる」と言わんばかりの脱毛サロンの広告を見るのも辛かった。
彼氏ができたとき、体を見られるのが怖くて全身脱毛に通い始めた。
初めて行ったサロンで、頼んでもないのに、体毛の濃さを5段階で評価され、自分は最も濃い「5」だと伝えられた。
当時付き合っていた彼氏に、脱毛に通い始めたことを伝えると「いいね」と言われた。心のどこかで「そのまんまでいいよ」と言ってほしかったのかもしれない。
脱毛サロンは10回コースだったが最後の最後で通うのを辞めてしまった。
体にアトピー痕があり、施術師の女性に体を見られるのも辛くなってきたのだ。
彼女たちにはスクールカースト上位の子に対する感覚となんだか似たものを感じた。
美容業界の人であり、そこではキレイになることが正義であるようで、いづらさを感じた。
自分の体も、毛も、好き！
その後、彼氏と別れ、作品制作もうまくいかなくて、引きこもっていたので、毛の処理を何もしていなかった。
そんなとき、インスタで、堂々とワキ毛を生やして生活している女性の投稿を見て、いいなと思った。そして、ボディポジティブという考え方に触れていった。
鏡に映る自分の裸は好きだ。毛も割と気に入っている。でも、彼氏、世の中、友達、そういうものが間に入ると、このままじゃダメな気がしてしまう。
今育ったワキ毛を剃るのはなんだか惜しいけど、夏になってこのまま世の中に晒せるかどうかはまだ葛藤中だ。
体毛を生やしたままだと、「人から魅力的に見られることを捨てた女」と見られる気がする。
今は好きな男性がいないけど、好きな人ができた時に、剃るのか剃らないのか、そこが「ミソ」だと思っている。
自分の体も間違ってないと思えた。
自分の裸を見せて、「私の体、これで大丈夫ですよね！」って、誰かに肯定してほしいと思っていた。
そんなとき「＃ボディポジティブ」で検索していて、もすこを知った。
投稿やインスタライブを見て、共感できる、信頼できる、と思って、2時間以上かけて緊張しながらも「ヌードを描いてほしい」とメッセージを送った。
描かれる方だけでなく、描く方も裸になるというスタンスにも信頼が持てた。
描かれる人のことを思って作られた場所と体験で、こんなに私が求めてた場所は他にないと思った。
そして、いろいろな人がいろいろと言うけど、自分の体も作品も間違ってないんだと思えた。
インタビュー・ライティング/mossco
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